母島での再生可能エネルギー100%電力供給に向けた実証開始
系統安定化に仮想同期発電機機能付き蓄電池用インバータ(VSG-PCS)が採用
株式会社明電舎(以下、明電舎)は、8月29日から東京都、小笠原村、東京電力パワーグリッド株式会社(以下、東京電力PG)の3者が連携して開始する、小笠原村・母島での再生可能エネルギー100%電力供給に向けた実証に、東京電力PGと共同開発した「仮想同期発電機機能付き蓄電池用インバータ」(VSG-PCS)※1を納入しました。VSG-PCSが商用電源系統で実運用されるのは国内初(当社調べ)です。
本実証は母島に太陽光パネルや蓄電池等を設置し、1年のうち半年程度の期間を再エネのみでの電力供給を目指すものです。
母島に設置された太陽光発電設備
明電舎が納入したVSG-PCS
背景
小笠原諸島に位置する母島の「母島発電所」は、4基計960kWのディーゼル発電設備によって島内に電力供給しますが、CO2の排出や燃料調達費、発電機の修繕費用が課題となっていました。こうした中、東京都が目指す「ゼロエミッションアイランド」、小笠原村が掲げる「自然と調和したサステイナブルアイランド」実現に向けた取組みの一環で2018年12月、東京都、小笠原村、東京電力PGの3者で協定を締結。母島における年間消費量約300万kW/時の電力需要を再エネに置き換えることを目指し、新技術を活用した3年間の実証に取り組むこととなりました。一方、電力系統において再エネ電源導入比率が増加すると、火力発電等の同期発電機が相対的に減るため、系統全体の慣性が減少し、擾乱発生時に系統の安定性が低下する課題が指摘されています。本実証には従来の同期発電機と同様に慣性力※2と同期化力※3を供給できる、明電舎の仮想同期発電機機能付き蓄電池用インバータ(VSG-PCS)を投入しました。
仮想同期発電機機能付き蓄電池用インバータ(VSG-PCS) の特長
①インバータから従来の同期発電機と同様の慣性力及び同期化力を供給することが可能。
② 電圧型(GFM:Grid Forming)方式を採用しており、VSG-PCSのみで系統を構成して主電源として動作が可能。また、他の発電機等の電圧源との並列運転が可能。
③過電流抑制機能により、系統事故等に起因した過電流を抑制して運転継続することで、事故電流を継続して供給することが可能。(東京電力PGと共同で特許取得済み)
しかし、事故電流が減少すると従来の電力系統に設置されている保護リレーの感度に影響を与えます。本方式ではインバータの過電流耐量内で最大限の事故電流の供給が可能となり、保護リレーの感度への影響を最小限にすることができます。
【装置仕様】
今後、VSG機能を上記以外の機種へも適用し、島嶼以外における慣性力に関する課題解決にも貢献してまいります。
明電舎は、今後も環境負荷の低減や低炭素・脱炭素社会の実現に貢献する製品・システムの供給を通じて、より豊かな未来社会の実現に貢献してまいります。
参考リリース
2025年8月8日 東京電力PGプレスリリース
母島における再生可能エネルギー100%電力供給に向けた実証開始について
https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/press/2025/pdf/250808j0101.pdf
以 上
※1 特許第7182009号、他3件
※2 慣性力:電力系統が周波数を維持し続けようとする力。慣性力が大きい方が、電力系統で需給バランスが崩れた際に、周波数変動(変化量、変化速度)が小さくなる。
※3 同期化力:同期発電機が並列運転している状態で同期状態を乱す系統擾乱があった場合などに、元の状態に戻そうとする復原力。
本件及び取材に関するお問い合わせ先
株式会社 明電舎
コーポレートコミュニケーション推進部 広報・IR課
電話 03-6420-8100