MEIDEN Engineer’s Note(明電 エンジニアズノート):No.17 プロダクトデザイン ゼロのプロです。

プロダクトデザイン担当者 デザイン課 菊村 公介(左) デザイン課 坂口 雅弥(右)

目立たないところで生活を支える明電舎の製品たち。大事なのは性能やコストだから、デザインなんて必要あるの?なんて思っていませんか?実は、インフラを支える製品だからこそ、見た目にとどまらない人間のためのデザインが必要になる。プロダクトデザインの中心にある考え方を、デザイナーたちがゼロから語ります。

お二人はどんなお仕事をされているんですか?


▲坂口「デザイン課には、ハードのデザインとソフトのデザイン、2つの仕事がある。」
坂口
明電舎のデザイン課には、大きく二つの仕事があります。ぼくのように、発電装置やインバータなど、いわゆるハードと呼ばれる製品をデザインする仕事。それと、菊村が担当している監視制御・管理システムなどいわゆるソフトウェアのユーザインタフェースをデザインする仕事です。
菊村
ハードとソフトどちらの場合でも、わたしたちがデザインの基本に据えている考え方があります。それは、人間中心設計(HCD:Human Centered Design)です。カンタンに言うと、使う人の「使いやすさ」を考えたデザインということでしょうか。当たり前のことだと思うかもしれませんが、だからこそ重要なことなんです。

人間中心設計(HCD)では、具体的にどんなことをするんですか?

「HCDを取り入れたデザインの流れ」Human Centered Design(HCD)は、ユーザーの使用状況把握、分析、プロトタイプ作成、評価のプロセスをまわして、それを反復することで理想的なシステムを構築する手法です。
坂口
その製品のカタチや色彩、大きさ。文字やボタンなどの配置とサイズなど、製品を構成するすべての要素を、使う人にとっていちばん使いやすいものにする。使う人の現状を正しく把握するところから始めて、各所で使いやすさを最大限まで追求していって、製品というひとつのカタチにしていきます。
菊村
どんな製品もその機能を満たすだけではいけないと思うんです。使っていてストレスがないとか、間違った操作が起こりにくいとか、そういうことも大事。それも使いやすさだと思います。デザインするときは、既成概念や先入観にとらわれずに、毎回毎回使う人の目線を意識したり、その人の立場に立つように心がけています。

お二人がデザインした製品を教えてください。

坂口

いろいろありますが、ぼくの仕事でみなさんに知ってもらいたいのは、この非常用発電装置です。あんまり馴染みのない製品かもしれませんが、停電が起こったときなどに電力を速やかに供給して、みんなの不安を解消するための製品です。ちょうどコンテナを2個積み上げたくらいの大きさで、もともとの色はグレーでした。近くで見ると威圧感があるので、発電しているときだけじゃなく、設置されたときから安心感を覚えるようなデザインにしたかった。

いきなり自分の家や職場の近くに、得体のしれないグレーのコンテナが出現したら、きっと「あれは何だ?」と少なからず不安に思ってしまいます。そう思われてほしくなかった。そこで、パステル系の柔らかい色を使った塗装をほどこして、視覚的にもみんなが安心できる製品に改善したんです。

カタチも変わったように見えますが、どんな工夫がされているんですか。

坂口

この非常用発電装置の場合は、設置の利便性、購入のしやすさ、それから安全性に配慮しました。設置するスペースは通常、限られています。今までよりサイズダウンすることで使いやすさを高めました。また、見た目が良くっても、手が届かない価格になってしまったら意味がありません。製品価格を抑えるために、材料を減らせる形状や素材の変更を提案しました。購入のしやすさも、使いやすさにつながっているからです。

そして何より、暮らしを支える製品だからこそ、製品自体が安全でなくてはなりません。この製品の排気口からは熱風が出てきます。それはエンジンを冷やすために必要なことなんですが、利用者が気づかず排気口の前を通ったら危険です。そこで、排気口にある三角形のシェードを大きくして、初めから人が排気口に近づきにくいようなデザインにして、安全性を高めました。コスト、サイズ、安全性をデザインする。これも、ぼくらの仕事です。

今度は菊村さんがデザインしたものを教えてください。


▲菊村「ぼくはシステムのインタフェースデザインを担当しています。」
菊村
ぼくはソフトのデザインを担当しています。最近は、電鉄向けの電力監視制御システム、つまり電車が走るために必要な電力を監視するシステムのインタフェースデザインに携わりました。難しく聞こえるかもしれませんが、要は電鉄会社の監視業務の方が操作しやすいモニター画面をデザインする仕事です。詳しくは画面を見ながら説明した方がわかりやすいかな。これはJR東日本様向けに開発したシステムです。

どんな工夫をしたんですか?

路線上に配置されている配電所の情報は、これまでは文字列だけで表示されていましたが、新しいシステムでは路線図上に実際の場所が分かるように表示し、1画面に集約することで直感的な監視操作ができるようになりました。
菊村

たとえば、路線に配置されている配電所の情報を文字の羅列表記から実際の地図に近いカタチで表示するように変えました。また、いままで二画面にわかれて、画面を切り替えながら作業しなくてはならなかったものを一つの画面で同時に見られるようにしました。ボタンやタブも画面の中のどこに配置すると使いやすくなるかを追及してデザインしていきました。

重要なのは、誤操作が起こらないようにすること。人間だから間違って操作してしまう可能性もゼロではない。そのときに、きちんと確認画面が出て、誤った操作を完了させない工夫も必要なんです。これも人間中心設計。
電車は毎日走るものだから、みんなが困らないように、デザインのチカラで、その運行を支えていかなくてはいけない。

今後、何をデザインしてみたいですか?


▲「世の中の人が暮らしやすくなるデザインを続けていきたい。」
坂口
やっぱりぼくはハードのデザインが好きなので、もっといろいろな製品をデザインしてみたいです。大きな製品のデザインだけでなく小さな製品をやってみたいかな。非常用発電機のデザイン経験を生かして、家庭でも使えるような発電機のデザインなんかもやってみたいなぁ。どんな製品を担当しても、デザインのチカラで、みんなが明るく生活できる世の中をつくっていきたい。
菊村
デザインのチカラで解決できることは、何も製品をつくることだけに限られたものではないと思います。例えば、組織をデザインしたり、社会をデザインしたり。もっと言うと、世の中の人たちが、昨日より暮らしやすくなる今日をデザインすること。明電舎のデザイン課には、そういう仕事と責任があると思うんです。

プロフィール デザイン課 菊村 公介(左) 好きな野菜:紫タマネギ デザイン課 坂口 雅弥(右) 好きな野菜:紫キャベツ

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