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インタビュー/
開発秘話

GX特高製品の開発

ライフサイクル全体を見据えた
環境配慮型製品を開発

右:電力機器工場 スイッチギヤユニット 設計部 設計第一課 主任
鎌田 真悟さん
スイッチギヤユニットの構造設計を担当。お客様の要求に合わせて仕様や構造の検討から製作図面の作成、関連部署への指示まで幅広く手がける。
左:電力インフラ営業・技術本部 製品開発部 技術課 副課長
脇本 聖さん
電力用変圧器の開発を担う。主に絶縁技術、冷却技術、及び電磁現象に関する業務に従事。最近ではエステル油入変圧器とその診断技術の開発に取り組む。

GX特高製品について、従来製品と比較してどのような環境性能の優位性を持っているのか、具体的に教えてください。

-「エコC-GIS」についてはいかがでしょうか?

鎌田:

エコC-GISは、絶縁媒体をSF6ガスからドライエアに変更し、地球温暖化係数がCO2の23,500倍もあるSF6ガスを不使用としています。ドライエアとは自然由来のガスで、窒素や酸素、二酸化炭素などから構成され、空気とほぼ同じ成分分布です。

これによりライフサイクル(調達・製造・使用・廃棄)における温室効果ガス排出量を、従来製品に対して28%削減することに成功。地球温暖化防止対策に貢献しています。

また、エコC-GISは環境配慮5項目(Reduce,Reuse,Recycle,Long use,Separable)を考慮した製品であるため、顧客のグリーン調達にも貢献しています。

-「エコ変圧器」についてはいかがですか?

脇本:

エコ変圧器は、従来の鉱油に代わりにエステル油を絶縁油に使用し、機器の効率を標準効率、高効率、超高効率から選べるのが特徴です。

また、複数あるエステル油の種類を、お客様のニーズに合わせて、JIS C 2390 生分解性電気絶縁油に規定される3種のエステルすべてを取り揃えています。

エステル油の共通の特長は、生分解性と飽和水分量が高い点です。高い生分解性を有するため漏油時の環境負荷が低減されます。そして、飽和水分量が高いため、変圧器の寿命が延伸します。また、寿命をそのままにして温度上昇限度を格上げすることで、冷却装置の縮小化が可能です。

最近はカーボンニュートラルの実現に向けて、植物由来の絶縁油(JIS C 2390-2 天然エステルとJIS C 2390-3 植物由来エステル)が注目されています。

菜種油・大豆油は、引火点と燃焼点が高いため難燃性に優れ、特殊消火設備を省略する際の要件となり(消防予第205号 消防用設備等に係る執務資料の送付について(通知) 令和5年3月30日)、火災に対する安全性が重視される場所、地下の変電所や商業ビルに設置される機器に適しています。

パームヤシ脂肪酸エステルは、低粘度であるため冷却性能に優れ、輸送制限や既設基礎流用などコンパクト性が重視される機器に適しています。

GX特高製品の開発において、カーボンニュートラルの実現に向けてどのような目標を設定されていますか?

鎌田:

私たち明電舎では、お客様の課題解決につながる、持続可能で循環型社会にふさわしい製品を開発することを目標としています。

エコC-GISについては、絶縁媒体として温室効果ガスに指定されたSF6ガスの使用を排除し、ドライエアを使用することで、地球温暖化防止対策に貢献しています。

また、長年運転実績のある真空インタラプタ(VI)を遮断部に用い、主回路通電部を低圧力のドライエア中に密閉することで、外部雰囲気の影響を受けることがなく、高い信頼性を維持しています。

さらに、構造解析・電界解析技術を駆使し、機器の小型化にも成功。機器配置の最適化、部分複合絶縁の採用、絶縁設計の最適化により、従来製品と同等のサイズにすることができました。

SF6ガスは絶縁性能が高く、それをドライエアに替えると絶縁性能が落ちてしまうので、単純に考えると、機器のサイズを大きくする必要があるのですが、構造解析・電界解析技術を用いることで、最適な絶縁距離と封入圧力の確立が可能になり、従来のSF6ガス使用製品サイズまで落とすことができたんです。

このほか、監視面と各機器の操作機構を前面に集約することで、保守点検作業が容易になり、保守点検の省力化を実現しています。

脇本:

エコ変圧器では「環境配慮」「軽量・コンパクト化」「安全性」をキーワードに開発に取り組みました。

具体的には、エステル油のラインアップを拡充。難燃性に優れる天然エステルとコンパクト性に優れる植物由来エステルの両方をカバーすることで、植物由来の絶縁油の普及拡大を図ります。

さらに、機器の高効率化を推進するため、ライフサイクルコストの観点から、より低損失の変圧器をご提案しています。変圧器の場合はとくに、効率の良い機器ほど運転中の電力損失によるCO2排出量を削減できます。

それと並行して、今後は油入変圧器の脱鉱油だけでなく、ガス絶縁変圧器の脱SF6ガスの取り組みも進めていきます。

2030年、2050年の社会を見据えた時に、GX特高製品がどのような進化を遂げているとお考えでしょうか。

鎌田:

スイッチギヤ製品については、脱SF6ガス製品の適用電圧クラス範囲の拡大が加速することが予測されます。2030年を目途に、電圧クラス240kVの脱SF6ガス製品のリリースを目標に、2040年には全スイッチギヤ製品の脱SF6ガス化完遂を目指します。

また、現在取り組んでいるスマート保安の適用拡大を皮切りに、保守点検の省力化範囲の拡大や、機器の余寿命診断技術を確立することで、顧客負担の少ない信頼性の高い製品化を目指します。

脇本:

変圧器については、従来の鉱油入変圧器とSF6ガス絶縁変圧器に代わり、エステル油入変圧器といったGX特高製品の普及が加速すると考えられます。

明電舎としては、ライフサイクル全体でのCO2排出量を低減すべく、エステル油のリサイクル技術の確立、新たな高機能材料や新技術の適用によるさらなる軽量・コンパクト化・高効率化の実現、そして低騒音化の実現を目指します。

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