MEIDEN TECHNO COMPLEX
No.2 - 2004.11
エンジンがなくても走る車? 魔法ではありません。
電気自動車用インホイール駆動システム
In-Wheel Drive System for Electric Vehicle
地球環境問題対策の切り札として期待される電気自動車が普及・拡大するには、エンジン自動車以上の性能、エネルギー効率、乗り心地を実現する必要がある。最近、産学協同で開発された「Eliica」は、これらの課題を解決する高性能電気自動車だ。そして、明電舎は、モータを各タイヤホイールに組み込んだ駆動システムを「Eliica」向けに開発し、理想的な自動車の実現をお手伝いしている。
Breakdown
新形インホイールモータの開発で、21世紀にふさわしい高性能電気自動車の実現をサポート。
「Eliica」用インホイールモータ
「Eliica」の8輪全部に搭載されたインホイールモータ。モータをインホイール化し、車輪をダイレクトに駆動することで、客室内空間を拡大できるだけでなく、動力の伝達ロス、スピンを最小限に抑えられる。
モータとタイヤホイールの一体化
インホイールモータは、実際には、減速ギア、ブレーキなどと一体化された状態で、ホイール内部に組み込まれている。モータの回転部分は固定部分の内部にあり、最高1分あたり1万2000回転で高速回転する。
エンジン自動車の性能を超える夢の電気自動車
地球環境問題やエネルギー問題に対応するために、電気自動車(EV)の普及・拡大が喫緊の課題となっている。2004年 - 従来、EVが抱えていた数々の欠点を克服するスーパーEVが登場した。清水浩教授(慶應義塾大学)を中心に産学共同で開発された「Eliica(エリーカ)」だ。
「Eliica」は、高性能リチウムイオン電池を搭載した8輪駆動のEVで、各タイヤホイールに明電舎の開発したPMモータ(永久磁石型同期電動機)が搭載されている(インホイールモータと呼ぶ)。最高速度はF1カー並みの時速400キロに迫り、最大加速度は乗用車として驚異的な0.8G(重力加速度)を誇る。
磁石・コイルなど細部に工夫を積み重ね、小形化・高出力化の壁を突破
このインホイールモータを開発するにあたり、特にポイントになるのが小形化と高出力化である。小形化、高出力化という2つの条件を両立させるには、強力な希土類の磁石を搭載したPMモータの採用が最善の選択肢となった。
EV用PMモータの技術は、もちろんハイブリッド車にも転用可能である。明電舎は、電気駆動システム市場の拡大を睨み、ハイブリッド車を中心に、現在積極的に自動車メーカの研究・開発に参画している。
Interview
EV用PMモータは、技術的には、産業用と異なるおもしろさと難しさがあります。
水野孝行
産業システム事業本部 電機システム事業部 甲府工場 技術部 副部長
1981年入社。名古屋事業所、沼津事業所を経て、2003年4月に甲府工場に異動し、現在に至る。大学院の研究テーマは誘導発電機で、その時代も含めると、モータとのかかわりは4半世紀を超える。
EV用PMモータは、手探りの中から生まれた
「Eliica」用インホイールPMモータは非常に高性能ですが、これだけ高スペックなPMモータをいきなり開発できたわけではありません。1990年に「IZA」プロジェクトが始まり、それ以来EV用インホイールPMモータの技術を着実に進化させてきたからこそ、「今」があるのだと思っています。
EV用PMモータをベースに着実に他の分野へ展開
新しいものを手がけるときは、見通しがきかないため、予想どおりの特性が出て、一発でモノができることはほとんどありません。まず作ってみて、検証して、ダメだったら最初に戻ってやり直す。この繰り返しです。
Details
「Eliica」用インホイールモータは、15年に渡って蓄積してきた技術の集大成。
明電舎製モータの歴史とEVの進化

明電舎製モータの歴史とEVの進化

EV/HEV用駆動/発電システム納入実績累計
EV/HEV用駆動/発電システム納入実績累計
明電舎のEV用インホイールモータの開発史は、実際には、1990年の「IZA」まで遡る。「IZA」は清水浩教授を中心に開発されたEVで、当時、EVとして世界最高の時速176キロを達成した。EVで一般乗用車並みのスピードを出せるようになったのは、基幹部品であるモータの性能向上によるところが大きい。
明電舎のEV用インホイールPMモータは、「ルシオール」、「KAZ」、「Eliica」といった具合に、清水教授が指揮するプロジェクトとともに順調に進化を続けている。
環境問題対策の進展を追い風に、PMモータの特性が活かせる分野に注力。
1990年以降、EV用の高性能PMモータを開発し続けてきたことは、明電舎にとって、単にEV用モータを開発した以上の意義を持っている。
電気駆動システム市場において、高性能PMモータは、今後2つの分野で大きく飛躍する可能性を秘めている。1つはハイブリッド車、もう1つは建機の分野だ。
特に動きが目立つのは乗用車の分野であるが、2005年から段階的に導入される新排ガス規制により、今後は大型車の分野でもハイブリッド車の導入が拡大するものと予想されている。また、建機の分野では、排ガス低減以外に、夜間作業の騒音低減が切実に求められており、ホイールローダやパワーショベルなどでハイブリッド化が進む可能性がある。